建築家 阿部 勤さんの訃報を聞いたのは、2月のことでした。
昨秋、自邸の作品集が出版されたのを思い出し、
すぐに本屋さんへと走りました。
奇しくもその本は、
阿部さんの人生を振り返り、自邸50年の軌跡をまとめた本でした。
生い立ちから、家づくりの秘話、
住まいぶりや近所の子どもたちの噂話まで書かれており、
阿部さんのお人柄が本から伝わってきます。
藤塚光政さんが撮られた写真は、
阿部さんの家の「生活の匂い」まで捕らえています。
特に、表紙の書斎の写真は、
席を外した阿部さんが、今にも飲み物を片手に戻ってきそうで、
阿部さんが写った写真では、思わず涙がこぼれました。
18年前、ご縁があり、
ご自宅で、手料理を振舞っていただいたことがありますが、
気さくで優しいお人柄で、
ご自宅の説明やプライベートな質問にも快く応えてくれました。
お気に入りのノラ・ジョーンズが、途切れることなく流れ、
終電を逃すほど、居心地が良かったことを覚えています。
この本は、阿部さんのお人柄をうつしたように
多くの図面とともに、手書きのパースやスケッチを用いて
やさしく説明されています。
また、丁寧な構成や文体などから、
編集者の皆さんの阿部さんへの愛情も感じました。
どなたでも名作の秘密に迫れる素晴らしい本ですので、
多くの方に読んでいただけたら、嬉しく思います。
ノラ・ジョーンズを聴きながら、是非。