京都の東山にある「河井寛次郎 記念館」に行ってきました。
陶芸家である河井寛次郎自身が設計したこの建物は、実際に家族とともに暮らした自宅と工房を、河井さんのご家族やご子孫が、記念館として残されたものです。
記念館には、実際に使われていた登り窯から、調度品までが保存されており、当時の創作のようすや暮らしぶりが、窺えます。
また、河井さんは、陶芸のほか、彫刻や書などでも多くの作品を残されていますが、家具や照明器具などのデザインも手掛けています。いずれもどこか縄文的な親和性を帯びていて、優しく語りかけるようです。
建物は「町屋造り」となりますが、敷地の中央に広く明るい中庭があり、中庭を中心に住宅の各居室や工房や窯の位置が、部屋の用途と方位に合わせて整然と美しく配置されています。
二階建ての住居棟は、居間の吹き抜けを中心に部屋が配置され、寝室は開放的で中庭を見降ろせる気持ちの良い部屋となっていました。
また、洗面所など至る所には小さな収納が設けられ、暮らしに寄り添った家だと感じました。
銘木や高級な材料はあまり用いず、古材や職人の手仕事の刃物の跡をあえてデザインとして残すなど、河井さんの物づくり哲学や人間らしい優しさ、温もりを感じます。
「家は住まい手を表す」という言葉がありますが、この家は、まさに河井さんそのもののように感じました。
実際に使用されていた登り窯
母屋2階の上段の間
登り窯のすぐ横には、中庭に面した二畳ほどの部屋があり、ここで瞑想をしたりしていたそうです。